Topaztan’s blog

映画やドラマの感想や考察をつづっています

大河ドラマ

消された才女/才人、消された物語たち〜『光る君へ』レビュー〜

2024年大河ドラマ『光る君へ』が佳境ですね。31回以降まひろ(紫式部)は熱心に『源氏物語』を執筆し、宮中で人気になっていく様子が描かれました。その『源氏物語』執筆のきっかけであり対象読者として念頭に置かれている…とドラマ内で描写された一条天皇も、…

近代日本画の中の実朝③

これまで安田鞆彦、松岡映丘の実朝絵について述べてきましたが、彼ら以外にも実朝絵を残した近代日本画家がいます。安田鞆彦や松岡映丘の弟子や関係者が多いですが、その系統以外の人も描いていました。以下にご紹介していきます。 <安田鞆彦関係> ◼️磯田…

松岡映丘と源実朝 〜 近代日本画の中の実朝②

今回は、実朝の絵としては非常に有名な「右大臣実朝」を描いた松岡映丘について書きたいと思います。 安田靫彦が実朝の絵を5枚描いていたことは前回の記事でお伝えしましたが、映丘もまた、やはり少なくとも4枚は実朝絵を描いていたことが、今回の調査で判明…

光る君へ 第15回まで レビュー

現在放映中の大河ドラマ『光る君へ』、視聴率は最近10%ほどながら、Xなどを見る限り視聴している人は平安時代好きを中心に好評なようです。考証の倉本一宏先生も、ドラマのような紫式部と道長の恋愛関係はあり得ません、でもドラマはドラマとしてお楽しみく…

光る君へ 第二話感想 〜 親世代と子世代の葛藤

(『意匠図案の栞』6(秋田県内務部、明治36.)国立国会図書館デジタルコレクションより ) 第二話も引き続き面白かったです! 平安時代のイントロダクションも引き続き行いつつ、登場人物のキャラ立てを行っていきそれを今後の展開に結びつけるという、隙のない…

光る君へ 第一話感想 〜 平安時代の社会・経済をわかりやすく描く〜

面白かったです!!! サクサクとスピーディーな展開、一つ一つ意味を持たせたセリフや描写の積み重ねなど、脚本家の手腕の手堅さを味わう45分間でした。皆が言うように、雀の子を犬君が逃がしつるの元ネタ的なのも入っており、源氏物語ファンへの目配せも怠…

源実朝没後七百年記念行事②〜実朝を主人公にした歌舞伎演目の上演

実朝没後七百年祭は、歌舞伎の世界でも行われ、少なくとも3箇所、2演目で実朝を題材にした歌舞伎が上演されました。 ◉大正8年4月 場所: 明治座 <演目> 実朝公七百年祭記念狂言山崎紫紅『実朝公』(新作) 鎌倉八幡宮の場 <配役> 源実朝 升三 ほか ・当時の…

源実朝没後七百年記念行事①〜源実朝公七百年祭

源実朝は、1898年正岡子規の『歌よみに与ふる書』をはじめとする近代のアララギ派による称揚による注目以降、生誕や没後の節目ごとに記念の年として様々な催しが行われてきました。たとえば主だったものでは以下の年があります。 ・大正8年(1919年):没後七百…

源実朝の「夢日記」に書かれていたもの〜『鎌倉殿の13人』小道具の解読の試み〜

『鎌倉殿の13人』の42回「夢のゆくえ」で、将軍源実朝が宋の工人陳和卿と面会し、その内容が以前実朝が見た夢に一致するという、吾妻鏡でも有名な逸話を元にしたシーンが描かれました。 <ドラマあらすじ> 1216年6月、源仲章が京から宋の国の匠、陳和卿を連…

知られざる源実朝小説・戯曲①〜岡松和夫『実朝私記抄』

源実朝を扱った文芸作品は、有名なものとしては太宰治『右大臣実朝』、小林秀雄『実朝』、吉本隆明『源実朝』などがあります。以前書いたブログでも書きましたが、戦前〜戦後しばらくは実朝が文学界に大きなプレゼンスがあった時期であり、今でも読み継がれ…

源実朝の幻の消息を求めて〜善光寺「右大臣実朝卿消息」について調査顛末記

1.「国立国会図書館デジタルコレクション」は素晴らしいぞ 2.よく見えない〜善光寺に問い合わせ 3.図書館でそれっぽい本を調べてみる 4.写真集実物を入手・「みを」をパートナーに解読…そして急展開 5.改めてググったら…衝撃の真実 6.結論 1.「国立国…

『鎌倉殿の13人』における源実朝像の「新しさ」とは何か ー 従来の実朝像・研究動向との比較 <後編>

林勇『少年 右大臣源実朝』(大同館書店、昭和6年)挿絵(国立国会図書館デジタルコレクションより) 前編のつづきです ※2023年5月25日に 16)官位について の項目を追加しました 3.ドラマと史料類との異動・考察 1) 時政との関係 2) 疱瘡 3) 和歌への傾倒 4) 結…

『鎌倉殿の13人』における源実朝像の「新しさ」とは何か ー 従来の実朝像・研究動向との比較 <前編>

土岐善麿『源実朝 (青少年日本文学)』(至文堂、昭和19年) の挿絵 羽石光志 画 ※国立国会図書館デジタルコレクションより 源実朝は、近年著しく評価が変わってきた人物の1人です。たとえば実朝没後800年に編まれた、和歌研究者の渡部泰明氏編の『源実朝 虚実…

屏風・衝立類から読む『鎌倉殿の13人』

2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13』人では、美術の面でも大変興味深く観ました。衣装や小道具はもちろん、屏風や衝立などの室礼もとても印象的でした。その時代にふさわしい、雰囲気を盛り上げるというだけでなく、それを背負う登場人物の様子の描写にも大い…

『鎌倉殿の13人』とセクシャルマイノリティ表象〜大河での同性間の愛の表現の画期性とその限界

※論をわかりやすくするためにドラマのキャプチャ画像を載せていましたが、本文章が著作権法上の例外事項である「批評」に当たらない可能性があることを考慮し、削除させて頂きました。2022/1/8 ※「夢のゆくえ」のところで「画面からは千世がはけて実朝と泰時…